理工学部(数・物・情・応生・経営工)2020年第3問

理工(数・物・情・応生・経営工)
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 今回は2020年理工学部第3問を解説します. 小問が5つあり, かなり丁寧に誘導がされているため, 誘導にしっかり乗って計算をすれば完答できるかと思います.

問題文全文

 定数 \(k (k>0)\) に対し, 関数 \(f(x)\) を定積分

\begin{align}f(x)=\int_0^{k}\left|e^t-x\right|dt\end{align}

により定義する. ただし, \(e\) は自然対数の底とする.

(1) \(x<1\) のとき, 上の定積分を計算し, \(f(x)\) を \(x\) と \(k\) を用いて表せ.

(2) \(1\leqq x \leqq e^k\) のとき, 上の定積分を計算し, \(f(x)\) を \(x\) と \(k\) を用いて表せ.

(3) 区間 \(1\leqq x\leqq e^k\) における \(f(x)\) の最小値を \(k\) を用いて表せ.

(4) (3) で求めた最小値が 1 となる \(k\) の値を求めよ.

(5) \(k\) を (4) で求めた値とする. このとき, 座標平面において曲線 \(y=f(x)\), \(x\) 軸, 直線\(x=1\), および, 直線 \(x=e^k\) で囲まれた部分の面積を求めよ.

着眼点

 基本的には誘導に乗って解答していくだけです。(5) を解く際にグラフの概形を考えますが, (4) で最小値が 1 と言っているので \(y=f(x)\) のグラフは \(x\) 軸よりも上にあることが分かります. それさえ分かれば問題なく面積は求められると思います.

解答

(1) \(x<1\) より, \(0 \leqq t\leqq k\) において, \(e^t>x\) なので,

\begin{align} f(x)=\int_0^k\left(e^t-x\right)dt\end{align}

\begin{align}=\biggl[e^t-xt\biggr]_0^k=-kx+e^k-1\end{align}

(2)

\(y=e^t\) と\(y=x\) の交点の \(t\) 座標は, \(e^t=x\) より, \(t=\log x\) である. 上図より, \(0\leqq t\leqq \log x\) において \(e^t\leqq x\), \(\log x\leqq t\leqq k\) において \(e^t\geqq x\) なので,

\begin{align}f(x)=\int_0^{\log x}\left(-e^t+x\right)dt+\int_{\log x}^k\left(e^t-x\right)dt\end{align}

\begin{align}=\biggl[-e^t+xt\biggr]_0^{\log x}+\biggl[e^t-xt\biggr]_{\log x}^k\end{align}

\begin{align}=-x+x\log x+1+e^k-xk-x+x\log x\end{align}

\begin{align}=x\left(2\log x-k-2\right)+e^k+1\end{align}

(3) \(1\leqq x\leqq e^k\) において, \(f(x)\) は微分可能であるから,

\begin{align}f^{\prime}(x)=2\log x-k-2+x\cdot\frac{2}{x}=2\log x-k\end{align}

\(f^{\prime}(x)=0\) のとき, \(\displaystyle \log x=\frac{k}{2}\) より, \(\displaystyle x=e^{\frac{k}{2}}\).

増減表は以下のようになる.

\begin{array}{c|c|c|c|c|c}x & 1 & \cdots & \displaystyle e^{\frac{k}{2}} & \cdots & e^k \\ \hline f^{\prime}(x) & {} & – & 0 & + & {}\\ \hline f(x) & {} & \searrow & 最小 & \nearrow & {}\\ \end{array}

よって, 最小値は

\begin{align}f\left(e^{\frac{k}{2}}\right)=e^{\frac{k}{2}}(k-k-2)+e^k+1=e^k-2e^{\frac{k}{2}}+1.\end{align}

(4) (3)より, \(\displaystyle e^k-2e^{\frac{k}{2}}+1=1\) のとき,

\begin{align}e^{\frac{k}{2}}\left(e^{\frac{k}{2}}-2\right)=0\end{align}

\(\displaystyle e^{\frac{k}{2}}>0\) より, \(\displaystyle e^{\frac{k}{2}}=2\) つまり, \(k=2\log 2\).

(5) (4)の増減表により, \(y=f(x)\) のグラフは下図のようになる. 求める面積を \(S\) とおくと,

\begin{align}S=\int_1^4\left\{x\left(2\log x-2\log 2 -2\right)+5\right\}dx\end{align}

\begin{align}=biggl[\frac{1}{2}x^2\left(2\log x -2\log 2 -2\right)+5x\biggr]_1^4-\int_1^4\frac{1}{2}x^2\cdot \frac{2}{x}dx\end{align}

\begin{align}=8\left(2\log 2 -2\right)+20-\frac{1}{2}\left(-2\log 2 -2\right)-5-\biggl[\frac{1}{2}x^2\biggr]_1^4\end{align}

\begin{align}=16\log 2+4+\log 2+1-5-\left(8-\frac{1}{2}\right)\end{align}

\begin{align}=17\log 2-\frac{15}{2}.\end{align}

補足説明(端点の大小関係)

(5) 図では, \(f(1)\) よりも \(f(4)\) の方が大きいように描いている. 問題を解くだけなら不要であるが, その根拠を下に記しておく.

\(f(x)=x\left(2\log x -2\log 2 -2\right)+5\) より,

\begin{align}f(1)=-2\log 2+3=\log \frac{e^3}{4},\end{align}

\begin{align}f(4)=4\left(2\log 2 -2\right)+5=8\log 2 -3=\log \frac{256}{e^3}.\end{align}

ここで,

\begin{align}\frac{e^3}{4}-\frac{256}{e^3}=\frac{e^6-1024}{4e^3}<\frac{3^6-1024}{4e^3}=\frac{-295}{4e^3}<0\end{align}

より, \(\displaystyle \frac{e^3}{4}<\frac{256}{e^3}\) であり, 底 \(e>1\) だから, \(f(1)<f(4)\).

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