理学部(数学科専用)2010年第1問(4)

理(数学科専用)
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問題文全文

次の問いに答えよ. ただし\(,\) \(\log{x}\) は \(x\) の自然対数を表す.

(a) 次の極限値を求めよ.

\begin{align}\lim_{n\to \infty}\sum_{k=1}^n\frac{k}{n^2}\log{\left(\frac{n+k}{n}\right)}\end{align}

(b) 次の積分の値を求めよ.

\begin{align}\int_0^1\frac{2x+2}{x^2+x+1}dx\end{align}

(a) の着眼点

\(\lim\) と \(\sum\) と \(\displaystyle \frac{k}{n}\) が見えたら区分求積法を疑いましょう.

区分求積法の公式は以下になります.

\begin{align}\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n}\sum_{k=1}^nf\left(\frac{k}{n}\right)=\int_0^1f(x)dx\end{align}

公式が使えるように式を変形しましょう. ポイントは

① \(\sum\) の外に \(\displaystyle \frac{1}{n}\) を出す.

② \(\displaystyle \frac{k}{n}\) を \(x\) に置き換えたものを積分する.

(a) の解答

\begin{align}\lim_{n\to \infty}\sum_{k=1}^n\frac{k}{n^2}\log{\left(\frac{n+k}{n}\right)}\end{align}

\begin{align}=\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n}\sum_{k=1}^n\frac{k}{n}\log{\left(1+\frac{k}{n}\right)}=\int_0^1x\log{(1+x)}dx\end{align}

\begin{align}=\int_0^1\{(1+x)\log{(1+x)}-\log{(1+x)}\}dx\end{align}

\begin{align}=\biggl[\frac{(1+x)^2}{2}\log{(1+x)}\biggr]_0^1-\int_0^1\frac{(1+x)^2}{2}\cdot \frac{1}{1+x}dx-\biggl[(1+x)\log{(1+x)}-x\biggr]_0^1\end{align}

\begin{align}=2\log{2}-\biggl[\frac{(1+x)^2}{4}\biggr]_0^1-2\log{2}+1=\frac{1}{4}~~~~\cdots \fbox{答}\end{align}

quandle
quandle

\(x\log{(1+x)}=(1+x)\log{(1+x)}-\log{(1+x)}\) と見て積分すると計算量が減ります. 真数である \(1+x\) に揃えることで約分がしやすくなるからです.

上記の変形をせずにそのまま部分積分をしてもできますが\(,\) \(\displaystyle \int \frac{x^2}{1+x}dx\) の計算が出てくるため\(,\) 一旦次数下げをする手間が増えてしまいます.

(b) の着眼点

\begin{align}f(x)~:~多項式 ~,~g(x)~:~2~次式\end{align}

とするとき\(,\)

\begin{align}\int \frac{f(x)}{g(x)}dx\end{align}

の計算は以下の手順を踏んで計算しましょう.

① \(f(x)\) の次数 \(\geqq 2\) であるときは次数下げを行って(分子を分母で割って)分子の次数を \(1\) 以下にする.

例: \(\displaystyle \frac{2x^3+3x^2}{x^2+1}=\frac{(2x+3)(x^2+1)-2x-3}{x^2+1}=2x+3-\frac{2x+3}{x^2+1}\)

② 分母の微分系が出てくるように変形する.(①の操作により\(,\) \(f(x)\) の次数は \(1\) 以下としてよい.)

\begin{align}\frac{f(x)}{g(x)}=a\frac{g^{\prime}(x)}{g(x)}+b\frac{1}{g(x)}\end{align}

これにより\(,\)

\begin{align}\int \frac{g^{\prime}(x)}{g(x)}dx=\log{|g(x)|}+C\end{align}

の計算ができるようになります.

③ \(g(x)=0\) の判別式を \(D\) とします.

(1) \(g(x)\) が因数分解できるとき⇒部分分数分解する

例:\(\displaystyle \int \frac{1}{x^2+3x+2}dx=\int \left(\frac{1}{x+1}-\frac{1}{x+2}\right)dx\)

(2) \(D=0\) のとき \(g(x)=a(x-\alpha )^2\) となるので\(,\)

\begin{align}\int \frac{1}{(x-\alpha )^2}dx=-\frac{1}{x-\alpha}+C\end{align}

とできる.

(3) \(D>0\) のとき⇒平方完成して \(\tan\) で置換する

\begin{align}\int \frac{1}{x^2+a^2}dx\end{align}

は \(x=a\tan{\theta}\) と置換することで計算できます.

(4) \(D<0\) のとき⇒平方完成して \(\sin\) で置換する

\begin{align}\int \frac{1}{x^2-a^2}dx\end{align}

は \(x=a\sin{\theta}\) と置換することで計算できます.

本問の場合は②⇒③(2)の手順で計算できます.

(b) の解答

\begin{align}I=\int_0^1\frac{2x+2}{x^2+x+1}dx\end{align}

とおく.

\begin{align}I=\int_0^1\frac{2x+2}{x^2+x+1}dx=\int_0^1\left(\frac{2x+1}{x^2+x+1}+\frac{1}{x^2+x+1}\right)dx\end{align}

\begin{align}=\biggl[\log{(x^2+x+1)}\biggr]_0^1+\int_0^1\cfrac{1}{\left(x+\cfrac{1}{2}\right)^2+\cfrac{3}{4}}dx\end{align}

\begin{align}x+\frac{1}{2}=\frac{\sqrt{3}}{2}\tan{\theta}\end{align}

とおくと\(,\)

\begin{align}dx=\frac{\sqrt{3}}{2}\cdot \frac{1}{\cos^2{\theta}}d\theta \end{align}

であり\(,\)

\begin{align}\begin{array}{|c|ccc|}\hline x & 0 & \to & 1 \\ \hline \theta & \displaystyle \frac{\pi}{6} & \to & \displaystyle \frac{\pi}{3} \\ \hline \end{array}\end{align}

であるから\(,\)

\begin{align}I=\log{3}+\int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{3}}\cfrac{1}{\cfrac{3}{4}(\tan^2{\theta}+1)}\cdot \frac{\sqrt{3}}{2}\cdot \frac{1}{\cos^2{\theta}}d\theta\end{align}

\begin{align}=\log{3}+\frac{2\sqrt{3}}{3}\int_{\frac{\pi}{6}}^{\frac{\pi}{3}}d\theta =\log{3}+\frac{2\sqrt{3}}{3}\left(\frac{\pi}{3}-\frac{\pi}{6}\right)\end{align}

\begin{align}=\log{3}+\frac{\sqrt{3}}{9}\pi ~~~~\cdots \fbox{答}\end{align}

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