今回は2020年理工学部第1問(3)の解説をしていきます。微分係数の定義に帰着する問題です。見えない条件を見破る必要があるので、慣れが必要です。
問題文全文
\(f(x), g(x)\) はすべての実数 \(x\) で微分可能な関数とする. また, \(g(x)\) は常に \(g(x)>0\) であるとする. さらに,
\begin{align}f(0)=0, f^{\prime}(0)=\frac{3}{4}, f(1)=\frac{5}{7}, f^{\prime}(1)=\frac{3}{7}\end{align}
\begin{align}g(0)=1, g^{\prime}(0)=\frac{1}{4}, g(1)=\frac{7}{5}, g^{\prime}(1)=\frac{1}{5}\end{align}
を満たすとする. ただし, \(f^{\prime}(x), g^{\prime}(x)\) はそれぞれ \(f(x), g(x)\) の導関数を表す. このとき次の極限値を求めよ. ただし, \(\log\) は自然対数を表す.
\begin{align}(a) \lim_{h\rightarrow 0}\frac{g(f(h))-1}{h}=\frac{\fbox{$\hskip0.8emト\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}{\fbox{$\hskip0.8emナニ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}\end{align}
\begin{align}(b)\lim_{h\rightarrow 0}\frac{\log (g(h))}{h}=\frac{\fbox{$\hskip0.8emヌ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}{\fbox{$\hskip0.8emネ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}\end{align}
\begin{align}(c)\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f(1+2h)g(1+2h)-1}{h}=\frac{\fbox{$\hskip0.8emノハ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}{\fbox{$\hskip0.8emヒフ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}\end{align}
\begin{align}(d)\lim_{h\rightarrow 0}\frac{\sin (f(3h))}{h}=\frac{\fbox{$\hskip0.8emヘ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}{\fbox{$\hskip0.8emホ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}\end{align}
\begin{align}(e)\lim_{h\rightarrow 0}\frac{12^{g(h)}-12}{h}=\fbox{$\hskip0.8emマ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}\log 2+\fbox{$\hskip0.8emミ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}\log 3\end{align}
着眼点
①5問とも微分係数の定義に帰着する問題です. 微分係数の定義は以下のとおりです.
\begin{align}f^{\prime}(a)=\lim_{h\rightarrow 0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\end{align}
となる \(f^{\prime}(a)\) が存在するとき, この \(f^{\prime}(a)\) を関数 \(f(x)\) の \(x=a\) における微分係数といい, このとき関数 \(f(x)\) は \(x=a\) で微分可能であるといいます. 微分係数の定義の右辺の分子にある \(f(a)\) が隠れているのでこれを見破る必要があります.
\(a\) では関数 \(g(x)\) と \(f(x)\) の合成関数 \((g(f(x))\) に関して微分係数の定義の形になっていないかを考えます. すると分子の 1 が今のところ微分係数の定義の形になっていません. もし\(g(f(0))\) という形になっていてくれれば微分係数の定義が使えそうです.
そこで \(g(f(0))\) を計算してみます. \(g(f(0))=g(0)=1\) となっているので確かに分子の 1 は\(g(f(0))\) とかけています.
同様に考えれば, \(b\) は \(\log (g(0))=\log 1=0\) になっていますし, \(c\) だけは \(x=1\) に関する微分係数を考える必要がありますが, \(f(1)g(1)=\frac{5}{7}\times \frac{7}{5}=1\) となっています. \(d\) は \(\sin(f(0))=sin 0=0\) になってますし, \(e\) は \(12^{g(0)}=12^1=12\) となっています.
これで微分係数の定義が使えそうということはわかりました. 問題は「そういう微分係数が存在するか」です. それは以下の理由により問題ありません.
②問題文に「 \(f(x), g(x)\) はすべての実数 \(x\) で微分可能な関数とする.」とあります. 証明はしませんが, 微分可能な関数同士の合成や積はまた微分可能になります. この条件があるため(a)〜(e) の全てで \(x=0\) や \(x=1\) における微分係数が存在すると言い切れます.
③「\(g(x)\) は常に \(g(x)>0\) であるとする.」という条件は (b) の真数条件を満たすため書かれているものです.
④ (c) や (d) は分子分母を \(2h\) や \(3h\) に揃える必要があるので注意が必要です.
解答
\begin{align}(a) \lim_{h\rightarrow 0}\frac{g(f(h))-1}{h}=\lim_{h\rightarrow 0}\frac{g(f(h))-g(f(0))}{h}\end{align}
\begin{align}=\left.\frac{d}{dx}g(f(x))\right|_{x=0}=g^{\prime}\left(f(0)\right)\times f^{\prime}(0)\end{align}
\begin{align}=\frac{1}{4}\times \frac{3}{4}=\frac{3}{16}.\end{align}
\begin{align}(b) \lim_{h\rightarrow 0}\frac{\log (g(h))}{h}=\lim_{h\rightarrow 0}\frac{\log (g(h))-\log (g(0))}{h}\end{align}
\begin{align}=\left.\frac{d}{dx}\log(g(x))\right|_{x=0}=\frac{g^{\prime}(0)}{g(0)}\frac{1}{4}.\end{align}
\begin{align}(c) \lim_{h\rightarrow 0}\frac{f(1+2h)g(1+2h)-1}{h}=\lim_{h\rightarrow 0}2\times \frac{f(1+2h)g(1+2h)-f(1)g(1)}{2h}\end{align}
\begin{align}=2\times \left.\frac{d}{dx}f(x)g(x)\right|_{x=1}=2\left\{f^{\prime}(1)g(1)+f(1)g^{\prime}(1)\right\}\end{align}
\begin{align}=2\left(\frac{3}{7}\times\frac{7}{5}+\frac{5}{7}\times\frac{1}{5}\right)=2\times\frac{26}{35}=\frac{52}{35}.\end{align}
\begin{align}(d) \lim_{h\rightarrow 0}\frac{\sin (f(3h))}{h}=\lim_{h\rightarrow 0}3\times\frac{\sin (f(3h))-\sin(f(0))}{3h}\end{align}
\begin{align}=3\times\left.\frac{d}{dx}\sin(f(x))\right|_{x=0}=3\times\cos(f(0))\times f^{\prime}(0)\end{align}
\begin{align}=3\times 1\times \frac{3}{4}=\frac{9}{4}.\end{align}
\begin{align}(e)\lim_{h\rightarrow 0}\frac{12^{g(h)}-12}{h}=\lim_{h\rightarrow 0}\frac{12^{g(h)}-12^{g(0)}}{h}\end{align}
\begin{align}=\left.\frac{d}{dx}12^{g(x)}\right|_{x=0}=\left(12^{g(0)}\log 12\right)\times g^{\prime}(0)\end{align}
\begin{align}=12(2\log 2+\log 3)\times \frac{1}{4}=6\log 2 +3\log 3.\end{align}