問題文全文
以下の問いに答えなさい. ただし\(,~m,~n\) は正の整数とする.
(1) 定積分 \(\displaystyle \int_{-\pi}^{\pi}\cos{mx}dx\) を求めなさい.
(2) 定積分 \(\displaystyle \int_{-\pi}^{\pi}\cos^2mxdx\) を求めなさい.
(3) \(m\neq n\) のとき\(,\) 定積分 \(\displaystyle \int_{-\pi}^{\pi}\cos{mx}\cos{nx}dx\) を求めなさい.
(4) 定積分 \(\displaystyle \int_{-\pi}^{\pi}(1+\cos x+\cos{2x}+\cos{3x}+\cos{4x}+\cos{5x})^2dx\) を求めなさい.
全体の着眼点
① まず (4) がものすごい長い式で出題されています. 2 乗したときのことを考えるとまともに計算をさせるとは思えません. 恐らく (1)〜(3) は (4) を解くためのヒントになるはずです.
② (1)〜(3) はいずれも
\begin{align}\int_{-a}^af(x)dx=\left\{\begin{array}{l}0~~(f(x) は奇関数) \\ \displaystyle 2 \int_0^af(x)dx~~(f(x) は偶関数) \\ \end{array}\right.\end{align}
が使えそうな形です. \(f(x)\) が偶関数か奇関数かを判断する必要があります.
\(f(-x)=f(x)\) が成り立つとき\(,~f(x)\) を偶関数といい\(,~f(-x)=-f(x)\) が成り立つとき\(,\) \(f(x)\) を奇関数といいます.
今回の場合は (1) の \(\cos{mx},\) (2) の \(\cos^2{mx},\) (3) の \(\cos{mx}\cos{nx}\) のいずれも偶関数です.
(1) の解答
\begin{align}\int_{-\pi}^{\pi}\cos{mx}dx=2\int_0^{\pi}\cos{mx}dx\end{align}
\begin{align}=2\biggl[\frac{1}{m}\sin{mx}\biggr]_0^{\pi}=0.\end{align}
(2) の解答
\begin{align}\int_{-\pi}^{\pi}\cos^2{mx}dx=2\int_0^{\pi}\cos^2{mx}dx\end{align}
\begin{align}=2\int_0^{\pi}\frac{1+\cos{2mx}}{2}dx\end{align}
\begin{align}=\biggl[x+\frac{1}{2m}\sin{2mx}\biggr]_0^{\pi}=\pi.\end{align}
quandle
半角の公式
\begin{align}\cos^2{\frac{x}{2}}=\frac{1+\cos x}{2}\end{align}
を利用して次数を下げます.
(3) の解答
\begin{align}\int_{-\pi}^{\pi}\cos{mx}\cos{nx}dx=2\int_0^{\pi}\cos{mx}\cos{nx}dx\end{align}
\begin{align}=2\int_0^{\pi}\frac{1}{2}\{\cos{(m+n)}x+\cos{(m-n)}x\}dx\end{align}
\begin{align}=\biggl[\frac{1}{m+n}\sin{(m+n)}x+\frac{1}{m-n}\sin{(m-n)}x\biggr]_0^{\pi}=0.\end{align}
quandle
積和の変換公式
\begin{align}\cos{\alpha}\cos{\beta}=\frac{1}{2}\{\cos{(\alpha +\beta)}+\cos{(\alpha -\beta)}\}\end{align}
を利用して次数を下げます.
(4) の着眼点
一般に
\begin{align}(a+b+c+d+e+f)^2=a^2+b^2+c^2+d^2+e^2+f^2+2ab+2ac+2ad+2ae+2af+2bc+2bd+2be+2bf+2cd+2ce+2cf+2de+2df+2ef\end{align}
になります.
覚え方は「それぞれの2乗+組み合わせて2倍」です. 今回の場合は\(,\)
\(\cos^2{2x}\) や \(\cos^2{5x}\) など2乗の形をした部分と \(1\cdot \cos2x\) や \(\cos{3x}\cos{4x}\) などの積の形をした部分が出てくるはずです.
2乗の形をした部分は (2) より\(,\) 積分すると \(\pi\) になります.
積の形をした部分は (1) と (3) より\(,\) 積分すると 0 になります.
このことを意識して答案を書きましょう. 長い足し算は \(\sum\) を使って書くとコンパクトになります.
(4) の解答
\begin{align}\int_{-\pi}^{\pi}(1+\cos x+\cos{2x}+\cos{3x}+\cos{4x}+\cos{5x})^2dx\end{align}
\begin{align}=2\int_0^{\pi}dx+2\sum_{k=1}^5\int_{-\pi}^{\pi}\cos{kx}dx+\sum_{\ell =1}^5\int_{-\pi}^{\pi}\cos^2{\ell x}+2\sum_{m<n}\int_{-\pi}^{\pi}\cos{mx}\cos{nx}dx\end{align}
\begin{align}=2\pi+2\cdot 5\cdot 0+5\pi+2\cdot {}_5\mathrm{C}_2 \cdot 0=7\pi.\end{align}
quandle
\(\displaystyle \sum_{m<n}\) という表記は見慣れないかもしれません. これは「 \(m<n\) を満たすすべての \((m,n)\) の組について足し合わせなさい」という意味です. 今回の場合は
\begin{align}(m,n)=(1,2),(1,3),(1,4),(1,5),(2,3),(2,4),(2,5),(3,4),(3,5),(4,5)\end{align}
の合計 10 個の和を計算しなさいという意味になります.
異なる 5 個の数字から 2 個選んで小さい順に並べればいいのですから\(,\)\({}_5\mathrm{C}_2=10\) 個ということです.
類題紹介
奇関数・偶関数の積分に関する類題を紹介します.
① 公立山口 工学部前期 2020年第1問(2)
② 公立山口 工学部中期 2020年第4問
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