理学部(応数・応物・応化)2022年第1問(3)

理(応数・応物・応化)
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理学部(応数・応物・応化)2022年第1問(3)の問題文全文

数列 \(\{a_n\}\) と \(\{b_n\}\) が以下の条件を満たしているとする.

\begin{align}a_1=3,~b_1=-1\end{align}

\begin{align}2a_{n+1}=5a_n+b_n~(n=1,~2,~3,~\cdots ),~\end{align}

\begin{align}2b_{n+1}=a_n+5b_n~(n=1,~2,~3,~\cdots ).\end{align}

このとき以下が成り立つ.

(a) \(\displaystyle \lim_{n\to \infty}\sum_{k=1}^n\frac{1}{a_k+b_k}=\frac{\fbox{$\hskip0.8emコ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}{\fbox{$\hskip0.8emサ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}\) である.

(b) \(\displaystyle \lim_{n\to \infty}\sum_{k=1}^n\frac{1}{{a_k}^2-{b_k}^2}=\frac{\fbox{$\hskip0.8emシ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}{\fbox{$\hskip0.8emスセ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}\) である.

(c) \(\displaystyle \lim_{n\to \infty}\left\{\frac{(a_1-b_1)(a_2-b_2)\cdots (a_n-b_n)}{(a_1+b_1)(a_2+b_2)\cdots (a_n+b_n)}\right\}^{\frac{1}{n^2}}=\sqrt{\frac{\fbox{$\hskip0.8emソ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}{\fbox{$\hskip0.8emタ\hskip0.8em\Rule{0pt}{0.8em}{0.4em}$}}}\) である.

\(a_n+b_n\) と \(a_n-b_n\) を求める

与えられている漸化式は「対称型の連立漸化式」になっています.

\begin{align}\left\{\begin{array}{c}a_{n+1}=pa_n+qb_n\\ b_{n+1}=qa_n+pb_n\end{array}\right.\end{align}

の形の連立漸化式は \(a_n\) と \(b_n\) の係数がちょうど反対になっていて\(,\) 対称型と呼ばれています.

対称型の連立漸化式では辺々を足したり引いたりすることで一般項を出すことができます.

辺々足して\(,\)

\begin{align}2(a_{n+1}+b_{n+1})=6(a_n+b_n)\end{align}

\begin{align}a_{n+1}+b_{n+1}=3(a_n+b_n)\end{align}

数列 \(\{a_n+b_n\}\) は初項 \(a_1+b_1=3-1=2\)\(,\) 公比 \(3\) の等比数列であるから\(,\)

\begin{align}a_n+b_n=2\cdot 3^{n-1}~~~~\cdots ①\end{align}

辺々引いて\(,\)

\begin{align}2(a_{n+1}-b_{n+1})=4(a_n-b_n)\end{align}

\begin{align}a_{n+1}-b_{n+1}=2(a_n-b_n)\end{align}

数列 \(\{a_n-b_n\}\) は初項 \(a_1-b_1=3-(-1)=4\)\(,\) 公比 \(2\) の等比数列であるから\(,\)

\begin{align}a_n-b_n=4\cdot 2^{n-1}~~~~\cdots ②\end{align}

quandle
quandle

このあと\(,\) ①+②を \(2\) で割ることで一般項 \(a_n\) が\(,\) ①ー②を \(2\) で割ることで一般項 \(b_n\) が求まりますが\(,\) 今回の問題では使用しないので割愛します.

(a) の解答〜無限等比級数の和の公式〜

\begin{align}\lim_{n\to \infty}\sum_{k=1}^n\frac{1}{a_k+b_k}=\lim_{n\to \infty}\sum_{k=1}^n\frac{1}{2}\cdot \left(\frac{1}{3}\right)^{k-1}\end{align}

\begin{align}=\frac{1}{2}\cdot \cfrac{1}{1-\cfrac{1}{3}}=\frac{3}{4}~~~~\cdots \fbox{答}\end{align}

quandle
quandle

無限等比級数の和は

\begin{align}\frac{(初項)}{1- (公比)}\end{align}

と覚えておくと使いやすいです.

コ:3 サ:4

(b) の解答〜\({a_k}^2-{b_k}^2=(a_k+b_k)(a_k-b_k)\)〜

\begin{align}\lim_{n\to \infty}\sum_{k=1}^n\frac{1}{{a_k}^2-{b_k}^2}=\lim_{n\to \infty}\sum_{k=1}^n\frac{1}{(a_k+b_k)(a_k-b_k)}\end{align}

\begin{align}=\lim_{n\to \infty}\sum_{k=1}^n\frac{1}{8\cdot 6^{k-1}}=\lim_{n\to \infty}\sum_{k=1}^n\frac{1}{8}\cdot \left(\frac{1}{6}\right)^{k-1}\end{align}

\begin{align}=\frac{1}{8}\cdot \cfrac{1}{1-\cfrac{1}{6}}=\frac{3}{20}~~~~\cdots \fbox{答}\end{align}

シ:3 ス:2 セ:0

(c) の着眼点〜\(\log \) をとってみる〜

積、商、指数、累乗根、階乗が式の中にかなり多く出てくるときは「対数をとってみる」のがセオリーになります. 今回の問題も積・商・指数が登場していますので対数を取ってみるとうまくいきそうです.

対数をとると積は和に変形ができます. つまり\(,\) シグマを使って表すことができます.

対数をとるパターンの極限ではこのあと「区分求積法」と組み合わさることが多いです. 区分求積法を使えるように変形することを意識しましょう.

区分求積法の公式は以下になります.

\begin{align}\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n}\sum_{k=0}^{n-1}f\left(\frac{k}{n}\right)=\int_0^1f(x)dx\end{align}

変形のコツは

① シグマの前に \(\displaystyle \frac{1}{n}\) を持ってくること

② \(\displaystyle \frac{k}{n}\) の形を作るように変形して\(,\) \(f(x)\) を決めること

です.

(c) の解答〜区分求積法の利用〜

与式に底を \(e\) とする対数を取ったものを考える.

\begin{align}\lim_{n\to \infty}\log{\left\{\frac{a_1-b_1}{a_1+b_1}\cdot \frac{a_2-b_2}{a_2+b_2}\cdots \frac{a_k-b_k}{a_k+b_k}\right\}^{\frac{1}{n^2}}}\end{align}

\begin{align}=\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n^2}\sum_{k=1}^n\log{\frac{a_k-b_k}{a_k+b_k}}\end{align}

\begin{align}=\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n^2}\sum_{k=1}^n\log{2}\cdot \left(\frac{2}{3}\right)^{k-1}\end{align}

\begin{align}=\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n^2}\sum_{k=1}^n\left\{\log{2}+(k-1)\log{\frac{2}{3}}\right\}\end{align}

\begin{align}=\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n}\log{2}+\lim_{n\to \infty}\frac{1}{n}\sum_{k=0}^{n-1}\frac{k}{n}\log{\frac{2}{3}}\end{align}

quandle
quandle

区分求積法を利用するために \(\displaystyle \frac{k}{n}\) の形を作ることが目標になります.

\(\displaystyle \sum_{k=1}^n\frac{k-1}{n}=\sum_{k=0}^{n-1}\frac{k}{n}\)

と \(k\) を一つずらすことで \(\displaystyle \frac{k}{n}\) にすることができます.

\begin{align}=0+\int_0^1\left(\log{\frac{2}{3}}\right)xdx\end{align}

\begin{align}=\biggl[\frac{1}{2}\left(\log{\frac{2}{3}}\right)x^2\biggr]_0^1=\frac{1}{2}\log{\frac{2}{3}}\end{align}

よって求める極限は \(\log \) を外したものになるので\(,\)

\begin{align} \lim_{n\to \infty}\left\{\frac{(a_1-b_1)(a_2-b_2)\cdots (a_n-b_n)}{(a_1+b_1)(a_2+b_2)\cdots (a_n+b_n)}\right\}^{\frac{1}{n^2}}=\sqrt{\frac{2}{3}}~~~~\cdots \fbox{答}\end{align}

ソ:2 タ:3

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